アルハンブラ宮殿と言えばナスル朝宮殿

アルハンブラ宮殿と言えばナスル朝宮殿ですが、
これは、
以下の3つの宮殿から構成さています。

  • メスアール宮
  • コマレス宮
  • ライオン宮


これらは、
グラナダを首都とするナスル朝時代に次々に作られた宮殿で、
その昔には7つもあったらしいのですが、
現存するものは、
この3つだけだそうです。










メスアール宮
Palacios Mexuar
アルハンブラに現存する最古の建物で、
司法・行政が行われていた場所です。

ここは、
1319年に作られ、

  • メスアールの間
  • メスアールの中庭
  • 黄金の間

などから出来ています。






ここがメスアール宮の入口で、
ナスル朝宮殿の入口でもあります。






メスアールの間(Sala del Mexuar)
メスアールで最も古い建物で、
司法・行政が行われていた、

メスアールの間

ちなみに、
「メスアール」は「政庁」を意味するらしいです。

木組みの天井が珍しいですよね。
他の宮殿では見られません。



この部屋は、
ナスル王朝の時代には、
ステンドグラスがはめ込まれていたらしいのですが、
レコンキスタ以後入ってきたキリスト教徒によって、
現在の木の天井に変えらたそうです。



その天井は、

木工象嵌で細工されてます。






これは、
壁の一部ですが、

スタッコ(化粧漆喰)を用いて作られた模様で、
「アラベスク模様」と言うそうです。

この「アラベスク模様」はナスル朝宮殿のいたるところで見られます。

偶像崇拝が禁じられたイスラムでは、
文字や幾何学図形が発達したらしいです。



これをよく見てみると、
小さなデザインが組み合わされてひとつのデザインを作り、
それがまた組み合わされて更に大きなデザインを作り、
そのデザインが組み合わされて更に大きな、、、
と言うように、
無限にまとまりながらも拡散していくデザイン。

いい仕事しています、
ムスリムの人達。






後、
この部屋の壁の下半分には、

「アリカタード」と言われるモザイク・タイルが埋め込まれています。

四角いタイルならまだしも、
色・形の違うタイルって、
作るのも嵌めるのも、
結構な作業ですよね。

まぁ〜、
それは上の写真のスタッコも一緒ですけどね。
なんせ、
壁の一部分だけではなく、
全面ですからね。



ちなみに、

アルハンブラのチケットやガイドブックの表紙も装飾タイルです。

お土産にも、
このタイル柄のコースターがありました。

何か特別な意味があるんでしょうかね?






メスアールの中庭(Patio del Mexuar)
メスアールの間を出ると、

メスアールの中庭

こちらが南側で、
ここを入って行くと、
次のコマレス宮に出ます。



どうだ、
まいったか!

と言うような、
壁一面の装飾。






で、
反対を振り向くと、

北側はこんな感じです。

この奥は黄金の間です。



北側と南側で、
同じデザインにしないところが、
いいですね。






黄金の間(Cuarto Dorado)
来訪者の控え室として使われていたと言う、

黄金の間

ここの天井も、
メスアールの間と同じ木工象嵌で細工されてます。
しかも、
金箔が貼られています。

なので、
黄金の間なんでしょうね。



きっとここも、
メスアールの間と同じく、
キリスト教徒によって作り変えられたものだと思います。






黄金の間から見たメスアールの中庭






部屋の名前はわかりませんが、
メスアールの中庭からコマレス宮に行く時に、
小さな部屋(前室?)を通ります。

小さな部屋ですが、
なかなかいい感じなんです。

天井は、
黄金の間と同じく、
木工象嵌と金箔で出来ています。






で、
この壁を飾るのが、

スタッコ(化粧漆喰)を用いて作られた、
「アラベスク」と言われる、
幾何学模様。



とにかくこの宮殿、
どこに行っても、
このような装飾が壁一面に施されています。

どれだけの労力を要したんでしょうね?
ほんま、
凄いですわ。






さて、

ここを抜けると、
アルハンブラの顔を言われる(言われてないけど)、
コマレス宮アラヤネスの中庭に出ます。






コマレス宮
Palacios Comares
アルハンブラ宮殿の中核で、
外交・政治の中心の場所だったそうです。

ここは、
ユースフ1世の時代に建設が始まり、
息子のムハンマド5世に引き継がれ、

  • アラヤネスの中庭
  • コマレスの塔大使の間
  • 船の間

などから出来ています。






アラヤネスの中庭(Patio de los Arrayanes)
それでは、
ご覧下さい、
アルハンブラの顔(言われてないけど)、

ドン!!
















アラヤネスの中庭



私、
この景色を見て初めて分かったんです。

ここが、
アルハンブラだったんですね。

この景色は写真等で見たことがあったんですが、
アルハンブラって、
全然知らなくて、
この景色を見て初めて、
アルハンブラとこの景色がリンクしました f^^;)



それにしても、
見事なシンメトリーですね。



こちらが北側で、
後ろの塔が、
コマレスの塔






で、
反対の南側を見ると、

カルロス5世宮殿、 邪魔!






南北の壁は、

下はタイル、
上はスタッコによるモザイク模様で飾られています。




この模様は何に見えますか?

これは、
「絶えず成長する蔦」をモチーフにしているそうです。

イスラムの宇宙観と幾何学がミックスされた、
不思議なデザインです。






ちなみに、
「アラヤネス」って言うのは「天人花」で、

これです。

でも、
これは天人花の仲間の「銀梅花(マートル:Myrtle)」だと思いますね。

天人花は東南アジアの花で、
銀梅花は地中海沿岸の花なので。






この中庭は、
大使たちの盛大なレセプションを開く場であり、
要人たちが王様に謁見される時を待つ場所だったようです。






船の間(Sala de la Barca)
アラヤネスの中庭からコマレスの塔大使の間)に入る間にあるのが、

船の間




この部屋の名前の由来は、

天井がボート(Barca)の船底の形をしているからだそうです。

見事な木工象嵌です。





この部屋は「間」と言うほど大きくないですけど、
新たに即位した王様が玉座につくときに、
アッラーから祝福を授かる儀式を行う重要な場所だったそうです。






大使の間(Salon de Embajadores)
船の間から入った部屋が、

大使の間

この宮殿で一番デカい部屋です。

と言っても、
11m 四方ですけど。






話は少し変わりますが、
ムスリムの人達も多く訪れていました。

現在のスペインは、
レコンキスタの過程で、
それまでのイスラム文化を払拭(浄化)して作られたカトリック教国です。

しかし、
現実にはスペインをスペインたらしめる数多くの文化遺産が、
イスラムの時代に作られたものです。

この人達はこれらを見て、
何を思うのでしょうか?
う〜ん、、、






話は戻って、
大使の間ですが、
床面積が約121㎡、
天井の高さが約18mで、
コマレスの塔の内部空間を全て占有しています。


真ん中のデカい塔が、

コマレスの塔(Torre de Comarese)
50mの高さがあるそうです。




周囲の壁面はスタッコ仕上げで、

イスラム風な幾何学模様で飾られています。

ここには、
文字を装飾模様とする「カリグラフィー」で、

『神(アッラー)のみが勝者である』

と書かれています。
これは、
ここだけでなく、
宮殿のいたるところに書かれています。

また、
この言葉には、

『人間は不完全なもの』

という意味も込められており、
柱や壁など故意に歪ませた箇所(写真、左上)があるのですが、
歪みはそれを表現しているのだそうです。

奥が深い。




天井は、

木材を用いたアラベスクで星空をイメージしてるそうです。




三方の壁面には、

分厚い壁をくり抜いて作られた窓があり、
そこからは外の景色が眺められるようになっています。




床の中央には、
ロープが張られていますが、

この中には絨毯模様のタイルが敷き詰められてます。

ナスル朝時代のオリジナルなので、
これ以上痛まないように立ち入り禁止になってます。

この絨毯風タイルの中央には、
玉座があり、
各国使節が王様と謁見を行ったりした公式行事の場所らしいです。 

この大使の間は、
スペインにとっては歴史的にとても重要な部屋であり、
イスラム国最後の王様が 、
イザベル女王に宮殿の鍵を渡した部屋なんです。

これをもって、
レコンキスタが完了した訳ですね。







ライオン宮
Palacios Leones
3つある宮殿の中でも、
最もゴージャスなのが、
このライオン宮

ここは、
ムハンマド5世の時代に作られ、
ナスル朝芸術の最高傑作と言われており、

  • ライオンの中庭
  • アベンセラヘスの間
  • 二姉妹の間
  • 諸王の間
  • リンダラハのバルコニー

などから出来ています。






ライオンの中庭(Patio de los Leones)
ライオン宮の中心になるのが、

ライオンの中庭



こちらが、
その、

ライオン。

どう見ても、
ワンコにしか見えませんが ^^

12匹います。
なぜ、
12匹かと言えば、
これは水時計でして、
時間に対応する数のライオンが水を出すそうなんですが、
行った時は全部のライオンが水を吐き出していました。
トラブルですかね?



このライオン、
一匹、一匹、顔が違うんです。
結構ユーモラスな顔してます。




そして、
この庭の周りには、

124本の大理石の柱が立ち並んでいます。






諸王の間(Sala de los Reyes)
ライオンの中庭の東側にあるのが、

諸王の間

この左側がライオンの中庭で、
右が王様の寝室だったところで、
小部屋になっているらしいのですが、
今回は工事中で入る事が出来ませんでした。

この小部屋の天井には絵画が残されており、
中央の天井にはナスル朝歴代10人の王様の肖像画が描かれているそうです。

具象崇拝禁止のイスラム教で、
肖像画なんて珍しいですよね。



しかし、

この小部屋の前室もアーチ型の壁で別れており、



各部屋の天井は全て異なった作りになっています。




諸王の間から見たライオンの中庭






アベンセラヘスの間(Sala de los Abencerrajes)
ライオンの中庭の南側にある部屋が、

アベンセラヘスの間

皆さん、
上を向いてはるでしょう。

そうなんです、
この部屋の売りはなんと言っても、

この天井。

部屋は四角なのですが、
天井は8個の頂点を持つ星形。



星形は良いとして、
その周りは巨大蜂の巣かと思いましたよ^^;

これらは、
「ムカルナス」と言われる鐘乳石に似せたデザインで、
この宮殿内のいたるところで見ることが出来ます、


言い伝えによると、
預言者ムハンマドは、難を逃れるために逃げ込んだ洞窟で、大天使ガブリエルからインスピレーションを授かります。すると、洞窟の入り口に蜘蛛の巣が張り巡らせ難を逃れたと言います。

この洞窟の鍾乳石をイメージしたのが、
「ムカルナス」らしいです。



どうやって作るのか、
想像も出来ないのですが、
実は、
幾何学に基づいた約10酒類ほどの三角柱や四角柱の石膏パーツがあり、
それらを組み合わせることで、
無数のバリエーションを作ってるそうです。

幾何学、数学が得意なイスラムらしい、
合理的なシステムです。






「アベンセラヘス」とは「アベンセラヘ家」の意味で、
名高い騎士の名門、アベンセラヘ家の勇敢な騎士達は、不忠の罪によって、この部屋から一人ずつライオンの中庭に連れ出され、中央の噴水のところで、首を刎ねられたということから、
「アベンセラヘ家の間」と呼ばれている、、、

と言うのは伝説であって、
史実とは異なるようです。




クーポラから差し込む光によって、
天井が浮いているように見えません?

美しい。






二姉妹の間(Sala de Dos Hermanas)
ライオンの中庭の北側、
アベンセラヘスの間の対向にある部屋が、
二姉妹の間

すみません、
写真撮るの忘れました f^^;)



でも、
ここの売りも天井。

アベンセラヘスの間の天井は星形でしたが、

こちらは8角形。

こちらも、
「ムカルナス」と言われる鐘乳石飾りです。



ここは、
部屋の名前からして女性をイメージさせ、
ハーレムだっと言う説がありますが、
それも史実とは異なり、
実際は司政の場だったようですね。






リンダラハのバルコニー(Mirador de Lindaraja)
二姉妹の間の北側にあるのが、

リンダラハのバルコニー

ここは、
出っ張ってまして、
そこから、
下のリンダラハの庭を眺めることが出来ます。

この出っ張りの上の天井には、
ステンドグラスがはめ込まれています。

しっかし、
見事な細工ですねぇ〜。






ワシントン・アーヴィンの部屋
(Habitaciones de Washington Irving)
二姉妹の間を出て回廊を渡ると、

こんな部屋に来ました。

今まで見てきた部屋と随分違いますよね。



最初は物置か倉庫かと思ったのですが、

こんなプレートが掛かっています。



この時は全然分からずに、
写真だけ撮ったのですが、
後から調べると、
プレートには、

『WASHINGTON IRVING(ワシントン・アーヴィン)
 「アルハンブラ物語」を著した部屋』

と書かれているようです。



アメリカの外交官であったワシントン・アーヴィンが、スペインへ赴任中にアンダルシアを旅した際、当時廃墟となっていて勝手に様々な人が住み着いていた、アルハンブラ宮殿のこの部屋に自らも居を構え、そこに住まう人々から聞いた宮殿にまつわるミステリアスな伝説や、時に笑える市井の人々の逸話を中心にまとめられた作品が、
「アルハンブラ物語」

だそうです。

これがベストセラーになり、
それまで荒れ放題で捨て置かれていた、
アルハンブラ宮殿の 保存・修復の機運が高まったそうです。

しかし、
外交官の仕事はどうしちゃったんでしょうか?




本当は、
こう言うのを読んでから旅に出れば、
また違った景色が見えるんでしょうが、
どうもそう言うのが苦手でして、
いつも、
IKAB(行き当たりばったり)の旅になるんです ^^;

でも、
この本は読んでみたいと思います。






更に、
この回廊を進んで行くと、
女王の化粧室である、

結髪の間(Peinador de la Reina)

と言う部屋があり、

鹿がいました(笑)






リンダラハの庭(Jardines de Lindaraja)
回廊を降りると小さな庭園に出ます。
この庭園が、

リンダラハの庭

大きな糸杉が植えられており、
十分な日陰を提供してくれます。

ナスル朝宮殿の中では、
唯一の庭園であり、
ここにくるとホッとしますね。



この位置からだと分かりにくいですが、
上から見ると、

イスラムの幾何学模様のデザインです。
※ 写真は Wiki 教授よりお借りしたものです。



「リンダラハ」は、
王様ムハンマドの家臣の娘で、
超美人だった「リンダラハ」の名前からつけたようです。







以上、
ナスル朝宮殿、
終了です。






イスラム芸術の粋を集めたナスル朝宮殿ですが、
やはり、
特筆するは天井ですね。

これって、
椅子に座るキリスト教と、
寝っころがるイスラム教の違いなんでしょうか?



いずれにしても、
精密で優美なイスラム芸術の最高傑作、
良いものを見せてもらいました。












トマト祭りって、どんなん?
トマト祭りって、どんなん?
トマト祭りって、こんなんでした(前編)
トマト祭りって、こんなんでした(後編)
バレンシア、何も無かったけど、、、
グラナダと言えばアルハンブラ宮殿
アルハンブラ宮殿と言えばナスル朝宮殿
「ただタパ」巡り
フリヒリアナ、スペイン一美しい村なんですが、、、
ネルハ、結構えぇんちゃう?








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